ニューヨークランプミュージアム&フラワーガーデン

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お知らせ 2022.12.23 現代作家ステンドグラス展示&販売会 ランプ紹介

当園では、リニューアルオープン5周年記念として、現代作家ステンドグラス展示&販売会を開催しております。

ミュージアムでは、120年前のアンティーク・ティファニーランプと、ティファニーをリスペクトする現代作家のランプ14点を、同じ空間でご覧いただけます。

時を超えた競演は2023年1月29日までの期間限定となりますので、ぜひご覧ください。

とはいえ、興味はあるけど期間中は多忙で…という方もいらっしゃるかと思います。

実物をご覧いただくのが一番ではございますが、こちらの紹介記事で、少しでも魅力をお伝えできれば幸いです。

 

  • バージニアクリーパー  Virginia creeper

作家:緒方修一  17インチ    ¥770.000(税込)

ティファニーのランプには数多くのデザインがあり、傑作ぞろいですが、中でも評価の高い「Tiffanyの三大テーブルランプ」と呼ばれる作品があります。「cobweb 蜘蛛の巣」、「lotus 蓮」、そして、この「Virginia creeper アメリカ蔦」です。

アメリカ蔦は、秋、色鮮やかに紅葉する、北アメリカ原産のつる性植物。

手のひらのようにも見える葉は、春から秋にかけてはグリーンですが、秋は一変して、燃えるように鮮やかな紅色となります。

ティファニーのバージニアクリーパーは、まさにその紅葉をガラスに写し取ったかのようなデザインで、ランプの金属部分さえ、自然にツタがからみつくような、ナチュラルな造形となっています。

金属部分の所々にナギットというパーツがうめこまれ、輝きを添えています。

 遠目にも際立つ紅色ガラスは、ゆるやかにウェーブがかっていますが、これはガラスを窯(キルン)にいれて熱を加え、凸凹をつけたものです。

鮮やかな赤を発色させるためには、原料として金を使用するため、ガラスパーツ自体も高価になっています。

 

ウィステリア Wisteria

作家:緒方修一  18インチ  ¥1.650.000(税込)

「藤」はティファニースタジオが好んだモチーフで、当時から人気の高かったモデルです。

もとより自然界にある藤の花は上から下へしだれるような形状をしていますが、ティファニースタジオでは、それを照明器具のランプシェードの形と結びつかせて、無理なくデザイン化しています。

大型でパーツもたいへん多く、重量もあるため、補強も重要です。

こちらのランプシェードの下部は、ぐるりと銅ワイヤーを通して一緒にハンダ付けがなされ、強度を増しています。

120年前のアンティーク・ティファニーランプも同様に、藤の先端部が補強されていました。

上部の金属パーツは「ブランチ」といい、10万円はくだらない高価な部品です。

ベースも希少品で、国内では入手困難な品物です。

 

  • ペオニータブレット Peony

作家:緒方修一  10インチ  ¥630.000(税込)

ペオニーは芍薬(シャクヤク)の花。花びらの表面は、波うつようなドレパリーガラスを多用し、立体的な表現となっています。

アメリカのガラスメーカーである、ウロボロス社やオセアナ社のガラスを使用。

両社は、ティファニーレプリカを制作するための板ガラスを製造し、当時に近い高品質のガラスを再現しているメーカーです。

シェードは、つりさげランプとしても、普通のテーブルランプとしても使える仕様です。(但しテーブルランプとして使用する際は、別にベースが必要です。)

 

  • ウォーターリリー Water lily 睡蓮

作家:佐々木真弓  20インチ  ¥500.000(税込)

ドレープ(ひだ)のあるガラスが、蓮池の水面のさざめきを思わせます。アメリカのヤカゲニー社やウロボロス社復刻ガラスを使用しています。

ベースはティファニーのCattail pond lily baseを忠実に再現しており、ベースだけで20~30万円かかる品です。

睡蓮の淡紅色は、可憐なだけでなく、仏教の聖なる花である蓮花の神聖さをも感じさせる高貴な色。

ハンダ付けは厚めに盛られ、艶のある黒いラインが、1枚1枚のガラスパーツをしっかりとふちどっています。

ランプシェードの縁(下部)にはリムがはいり、補強もなされています。

作家の佐々木真弓は、世界遺産・下鴨神社や京都市役所のステンドグラスパネル作品も手掛けています。

 

  • リリーパッドコーン Lilypad cone 睡蓮の葉

作家:佐々木真弓  20インチ  ¥450.000(税込)

ニューヨークランプミュージアムに展示してあるアンティークランプは、ブルーベースに緑の葉が浮かんでいますが、

こちらは南の海を思わせるエメラルドグリーンベースに、深い秋に見られるような色の葉が浮かんでいます。

日本人好みといわれますが、色ガラスの選択によって、ここまで雰囲気が変わるものかと実感させてくれます。

ランプシェードの曲面に、直線的なガラスの葉のパーツは沿わないため、端が立ち上がりますが、ハンダで厚めにうめこんであります。これが、水面に浮かぶ葉の立体感を演出しています。

下部をぐるりと取り巻く丸パーツは「ジュエル」といって、フュージングで作られています。

作家の佐々木真弓は、京都にて、ステンドグラスアトリエエンジェルを主宰。

この作品のベースは、アトリエの名の通り「天使」のモチーフとなっています。

~作家の言葉~

ルイスC.ティファニーは「ファヴリル」という何層もの色を重ねた複雑な色相を醸し出す色板ガラスを開発し、制作されたランプや窓のジャポニズムの影響を受けた花や生物のモチーフは人々の心に温もりを伝えます。

100年以上時を経た今も、そのデザインが少しも色褪せる事無く新鮮な輝きを放つ所以です。

私はランプを制作するとき、「ティファニーのデザインに勝るものはない」といつも彼の一番のファンであることを幸せに、また誇りに思っています。

佐々木真弓

 

バタフライ Butterfly 蝶

作家:徳重くるみ  20インチ  ¥500.000(税込)

群舞する蝶。その羽は端が少し浮くよう、立体的にハンダ付けがなされ、羽ばたく躍動感を表現しています。

また、蝶の中心、オレンジ色のガラスは平面ではなく、加熱して、ころっとした厚みをもたせています。

ガラスは、上部の薄い部分はリンズ社、青い部分はオセアナ社のもの。

ガラスのランプシェードを覆うように、太い金属パーツがゆるいカーブを描いて何本も伸びています。これが、蝶の舞に方向性を形成し、調和をもたらしています。

この金属パーツの加工も、作家の徳重くるみ自ら手掛けています。

 

  • ピーコック Peacock くじゃく

作家:徳重くるみ  18インチ  ¥500.000(税込)

希少なリンズ社のヴィンテージガラスを使用。

さまざまな色は別々のガラスにも見えますが、実は、1枚の板ガラスから切り出されたもの。

さまざまな色が複雑に混ざり合う1枚の板ガラスシートを、作家がカラーや模様を吟味しながら、ひとつひとつのパーツをカットしていきます。

そして、ランプシェード全体が調和するように、効果的に配置しています。はんだ付けのラインは厚めで、重厚感があります。艶出しも施され、美しいラインがデザインを引き立てています。

ランプを支えているモザイクガラスの台座は希少で、たいへん高価な品物です。

作家は、京都にてステンドグラスアトリエ、アンジェリックグラスを主宰。

~作家の言葉〜

ルイス・C・ティファニーが作り出した、繊細かつ力強いガラスの表情は想像を絶する美しさです。自然を愛し美の追求に生涯を捧げ、色鮮やかに花や生き物など自然の美しい景色を作り出します。

そのランプは今でも時代を超え、美術館だけでなくご家庭のリビングで、色あせる事なく輝き続け、その場にいる人々に感動と安らぎ・暖かい優しさを届けています。

美しさと共にこの素晴らしい技法を次世代にも伝承していく使命を感じています。

徳重くるみ

 

  • ドッグウッド Dogwood

作家:大村房子  12インチ  ¥280.000(税込)

モチーフは、ハナミズキです。北アメリカ原産で、日本では1912年にワシントンD.C.に贈ったサクラの返礼として贈られた木として知られています。桜の開花が終わる頃に花芽をつけ始め、薄紅色のかわいい花を咲かせます。

作家の大村房子はアメリカでステンドグラスのインストラクターを務めていた経験もある人物。ランプ上部には、リンズ社のヴィンテージガラスを使用。Linsリンズ社は2003年春に廃業したため、入手困難で高価なガラスとなっています。

 

  • ドッグウッド Dogwood

作家:大村房子  16インチ  ¥650.000(税込)

ハナミズキ…春そのものを表すような、ふわふわ感のある薄紅色の花びらは、「ゴールドピンク」という色で、発色させるための原料として金が混ぜ込まれているため、高価です。

作家の大村房子の言葉です。

「1974年、初めてTiffaney Lampを見た時の衝撃を忘れることが出来ません。時間と光の経過で見せる不思議なガラスの色の変化、表面の色だけでなく、ずっと奥にも何かあるようで引き込まれてしまう。ステンドグラスと言えば教会等しか知らなかった私は、壮大な絵画を見ているような奥深い色彩に驚きました。L.C.Tiffanyの言葉のように【形を見るより色彩を見る】良くわかった気がした瞬間でした。Lampの魔法からまだまだ抜け出せそうにありません。」

 

ピーコック Peacock  くじゃく

作家:かわもと工房  18インチ ¥570.000(税込)

かわもと工房の作品は繊細なはんだラインと「補強の重視」が特徴のひとつです。

それは120年前のティファニーと同様です。ガラスは壊れやすいイメージもありますが、しっかりと補強を施せば色褪せることないこれらの作品は100年の時を超えることもできる強い素材でもあります。現代作家たちが制作したランプも、100年先も輝き続けているでしょう。

 

  • チュ-リップ Tulip

作家:かわもと工房  18インチ ¥500.000(税込)

ヤカゲニー社のガラスを使用。台はアイアンベースです。

ニューヨークランプミュージアムには、ティファニースタジオの2種類のチューリップランプが展示されています。それは赤色のチューリップと、黄色のチューリンプですが、こちらの作品はミックス色で、春らしく軽やかな明るい雰囲気の作品に仕上がっています。

ランプシェードの、カーブがきつくなっている部分には、ボーダーとよばれる横一線のラインがはいっています。これによって、カーブがきつい部分でモチーフがゆがむことなく、ランプの形とモチーフが無理なく調和するように計算されているのです。

 

  • ドラゴンフライ Dragonfly とんぼ

作家:かわもと工房  16インチ  ¥400.000(税込)

発色させるための原料として金が混ぜ込まれた、ゴールドピンクという高価なガラスを使用しています。アメリカのブルザイ社製ガラス。白いガラスはドイツのランバーツ社製です。

トンボの翅の細かい模様は、フィリグリーという真鍮のパーツで表されており、それを白いガラスの上に重ねてはんだ付けしています。

こちらのランプの真骨頂は、白い壁を背にした時の映り込みの美しさです。ガラスの色、はんだのライン、トンボの姿もくっきりと映り込み、幻想的なムードを楽しめることでしょう。(壁への映り込みはLEDより白熱電球の方がきれいです)

 

  • ロシアン Russian

作家:かわもと工房  20インチ  ¥790.000(税込)

見るからに繊細なデザインです。必要なガラスピースは1800にも及びます。そのひとつひとつをコパーテープで巻き、上部から順に、はんだでとめていきます。

作家は「グリーン、イエロー系のおちついた色味を選びました。電気をつけた時と消した時の違いを楽しんでほしい。」と語っています。

デザインの肝となる大きなガラスはヘリンボーンガラスといって、魚の骨のような、ユニークな模様です。

台座は30万円くらいの高価な品で、高さ調整が可能となっています。

 

  • ロータスベル  Lotus bell

作家:かわもと工房  15インチ  ¥460.000(税込)

ステンドグラスのランプ制作には型(モールド)が必需品です。ティファニーのモールドは、版権をもつオデッセイ社が販売しています。ただし、すべてのデザインの型があるわけではなく、バージニアクリーパーなど、販売されていないものもあります。こちらのロータスベルに関しては、モールドがあり、ピース数は900弱です。

花モチーフなどのわかりやすいポイントがなく、ひたすら四角や三角の無機質なピースをつなぎあわせていく作業は、作家にとっては単調と思われますが、完成した時の喜びはひとしおだそうです。

末広がりの美しい曲線と、色の繊細なグラデーションをお楽しみください。

photo by isami : instagram : @kurolab_beeko